外資系経理

外資のFP&A(エフピーアンドエー)とControlling(コントローリング)って何?

外資のFP&AとControllingって何?

FP&A(エフピーアンドエー)って聞いたことありますか?

外資系企業にはFP&Aという部門もしくはポジションがあり、FP&AはFinancial Planning and Analysis(ファイナンシャル プランニング アンド アナリシス)の略で日本語では、直訳すると財務計画及び分析です。

日本で言うと経営企画部門の数字専門におこなう部署に近いです。

また、仕事は主に会社独自の成績表を作ったり、未来の数字作りをしたりします。

いわゆる管理会計ですね。

わたしが初めて経理の職種に就いた際は、FP&Aというポジションがあることを知りませんでした。

そのため同僚から「私、元々FP&Aだったから数字は粗いのよね」と言われた際にまったく意味が分かりませんでしたが、今考えると納得です。

今回はFP&Aっていったいどんな仕事なのかの具体的な部分を紹介します。

なお、FP&Aの他の言い方に“Controlling(コントローリング)”があります。

FP&AとControllingの違いは、アメリカ系企業かヨーロッパ系企業かです。

業務はどちらも同様でアメリカ系企業ではFP&Aと呼び、ヨーロッパ系企業ではControllingと言います。

 

外資のFP&AとControllingって何?

FP&AとControllingの具体的な業務は以下の5つです。

■FP&AとControllingの具体的な5つの業務

1.Actual(アクチュアル:現実)とBudget(バジェット:予算)の差異分析

2.本国への各種数値データのレポーティング

3.経営層への投資判断データの作成

4.予算作成

5.各部門へ数値データ提供

 

それぞれの具体的な内容を見てみましょう。

 

1.Actual(アクチュアル:現実)とBudget(バジェット:予算)の差異分析

1つ目はActualとBudgetの差異分析です。

具体的にはどんなことをおこなうかと言うと、通常の会社は月単位で今月いくら売上があって、いくら利益が出たかを経理が作ります。

経理が作ったデータを元に、元々のBudgetで作った数字とActualの数字がどれだけ乖離しているのかを調べます。

調べる中でGap(ギャップ:差)が大きなところは、何故差が大きいのかを数字を細かく見ていくことで理由を探したり、売上であれば、営業部門に根拠を確認したりし、原因を突き止めていくんですね。

この原因究明作業を“差異分析”と呼びます。

実際は、ActualとBudgetだけでなく、今年2月のActualと昨年2月のActualを比較してなぜ今年は売上が昨年に比べて高いのかなども分析します。

実際にどんな理由があるかは、業界や世の中の動きなどさまざまな理由がありますが、ActualとBudgetの差異で多いのは元々予定されていた金額が翌月へスライドした、もしくは前月から今月にスライドして金額が動いたというのが多いんじゃないでしょうか。

いずれにせよ、数字の根拠を突き止める作業です。

 

2.本国への各種数値データのレポーティング

2つ目は本国への各種数値データのレポーティングです。

レポーティングとは、会社独自の成績表をつけるためのフォーマットがあるので、そのフォーマットに必要事項(主に数字)を記入して、本国(親会社)へ報告(レポーティング)することです。

具体的には1つ目で分析した内容を入力して報告となります。

イメージとしてまずは経理が作った数字を会社独自の成績表に合うようにシステムからダウンロードしてエクセルで加工する場合もあれば、システムと連携して加工できるツールを持っている会社もあるので、いずれにせよ、何らかの形で成績表に合うようにデータを作ります。

ActualとBudgetの報告レポートであれば、よくあるパターンは全体的なサマリーをコメントする部分があるので今月の結果はBudgetに対して、昨年に対してどうだったのか、またその大きな要因を記入します。

さらには各項目でGapが大きな部分に関しては理由を記入します。

たとえば、売上であれば世界的なウイルスの蔓延でマスクの売上が予算よりも200%上がったなどです。

レポーティングは提出すればそれで終わりではなく、レポーティング後に本国からさまざまなツッコミがあるので、そのツッコミに対しても回答の必要があります。

このツッコミに即座に対応できるように1つ目の差異分析をしっかりおこない、自分の頭に原因を叩き込んでおくと、スムーズに対応ができますね。

当たり前ですが、Budgetに対してActualの数字が到達していない時ほど本国からツッコまれますw

 

3.経営層への投資判断データの作成

3つ目は経営層への投資判断データの作成です。

投資判断データの作成は業界などで大きくやるべき内容は変わりますが、数字の面でアドバイスをすることに変わりありません。

たとえば、製造業の場合では新たな工場の設立などが非常に重要な投資判断となります。

小売業であれば、店舗の出店計画やECの計画などです。

店舗の出店計画であれば、場所がどこで、どのくらいの坪数だった場合、人数を何人で回すので家賃はこのくらい、人件費はこのくらい、日々の売上は環境が近い店舗の売上から予測してこのくらい、初期の設備投資はこのくらいなどの数字を作り、このくらいの売上で行けば黒字化の目途が立つといった数字を作っていきます。

ECであれば、たとえば倉庫が日本から中国へ移動した場合、お客さまの注文から発送、到着までの日数が日本に倉庫があった時に比べて3日延びた場合にどのくらい売上のインパクトがあるかを数字に落として金額を算出します。

よくある話としては、商品の原価が5%上がると売値が変わらない場合、年間の利益にどのくらいインパクトがあるかなどもありますね。

FP&Aは経理と異なり1円単位をきっちり合わせていくことではなく、ある程度の精度で現実的な粗い数字を作り上げていくので、同じ数字を扱う部門でもやることは大きく変わります。

数字を作る上では、固定資産の減価償却の概念などを分かっていないと作れない数字も多いので、会計的なバックグラウンドも必要となりますね。

 

4.予算作成

4つ目は予算作成です。

FP&Aの年間の業務で一番の大仕事と言っても過言ではありません。

予算作成は、ざっくり言うと来年売上がいくらで、費用がいくらかかって、利益がどれくらい出るのかを作る作業です。

通常、予算の作り方と言うと来年はオリンピックがあり、オリンピックモデルの商品の仕掛けを5月のタイミングでおこない結果全体として20%売上アップにつながるという予定などさまざまな事象を元に数字の積み上げで作っていきます。

いわゆるボトムアップですね。

しかし、実際は本国から売上目標が下りてきて、その下りてきた数字を作るために上記の事象にえんぴつをなめなめして魔法をかけて理想的な数字を作りますw

日本の外資系企業は子会社に過ぎないので、トップダウンでの指示が基本です。

じゃあ予算はどんな風に作っているかは、具体的には全部門から必要な数字をもらい、もらった数字を積み上げて仕上がりを見ます。

積み上げた結果が、理にかなっているかを確認し必要であれば、各部門にいくら削ってほしいなどの依頼をおこないます。

また、各部門に数字の根拠を確認する必要もありますね。

これらの作業をおこなっていくことで、”いい感じの数字”に仕上げます。

この”いい感じの数字”は意外と難しく、全体的な仕上がりとしてバランスがとれた理にかなった数字ですので、さまざまな角度から調整する必要があります。

いったん数字ができて、レポーティングしても本国からここを削ってや売上を10%上げてなどの要望がきます。

要望の度に何度も作り直しをすることで予算ができます。

ちなみに、本国や他部門からバレずに何かあった際に自由に調整できる金額を隠し持てるかがFP&Aの腕の見せ所です。

バカ正直に作っていると、翌年にイレギュラーが発生した際に調整弁がないことでダメージを直撃しますが、自由に調整できる金額を持っていることで緩和されます。

もちろん、どのタイミングで使うかも腕の見せ所ですね。

 

5.各部門へ数値データ提供

5つ目は各部門へ数値データの提供です。

イメージは、毎月各部署で使用した実際の費用と、予算で持っていた費用のデータを送り、差がどれだけあるかを毎月確認してもらいます。

もし、実際の費用でおかしなものがあれば、内容を確認し、たとえば費用の付け方が間違っていれば経理に状況を伝えて修正仕訳を入れてもらいます。

また、毎週在庫金額の数字をロジスティックス部門へ提供することで現在の状況把握に役立ててもらったりもあるでしょう。

上記以外にも、各部門から「こんな数字って出せる?」と要望がくるので、必要な数字を提供していきます。

 

さいごに

今回は、FP&AとControllingって何をしているのかを紹介しました。

具体的には下記の5つの業務をおこなっています。

■FP&AとControllingの具体的な5つの業務

1.Actual(アクチュアル:現実)とBudget(バジェット:予算)の差異分析

2.本国への各種数値データのレポーティング

3.経営層への投資判断データの作成

4.予算作成

5.各部門へ数値データ提供

 

ほとんどの作業はエクセルになるので、わたしは経理からFP&A部門に異動した際は相当エクセル力が上がりました。

また、各部門や経営層から急な依頼も多いので、忙しい時は突如として忙しくなったり、急に暇になったりとボラの多い仕事でもあります。

現在経理で働いているが今後はFP&Aに興味がある方や日系企業の経営企画にいるが外資のFP&Aで働いてみたい方の参考になれば幸いです。

RELATED POST
外資系企業の経理のまとめ 外資系企業

外資系企業の経理のまとめ(1000万経理で稼ぐスキル、外資経理用語、日常業務、必要スキル)

2019年12月14日
外資系経理への転職、逆転そして人事へ
かみぞのです。 経理未経験から外資系企業の経理に転職し、外資系企業の経理に関する記事を多く書いてきました。 今回は外資系企業の経 …
外資系経理

外資系経理の仕事内容ってどんなことしているの?未経験者にも分かりやすく月初の仕事内容を解説

2018年12月8日
外資系経理への転職、逆転そして人事へ
外資系経理の仕事内容ってどんなことしているの? これから外資系の経理に転職を考えている方は、普段外資系の経理ってどんな仕事内容をお …