外資系企業での経理のキモはなんと言ってもIntercompany transaction(インターカンパニー トランザクション:会社間取引)です。
ちなみにIntercompany(インターカンパニー)とは”グループ会社”を意味します。
つまりIntercompany transactionとは同じグループ会社間でのやりとりになりますね。
外資系企業に勤めると海外の親会社や関連会社との取引金額は、かなりの割合を占めるでしょう。
そんなIntercompany transactionの多い外資系企業の経理で気をつけることはなんと言っても税務です。
税務と聞いただけで苦手意識のある方は多いんじゃないでしょうか。
ただ、今回わたしが紹介する2点は非常にシンプルです。
外資系企業の経理で特有のここだけは注意しておきたい2点は下記になります。
■外資系企業の経理で注意しておきたい2点
1.本国一括管理の費用は必ず計算資料をもらう
2.取引のある国との租税条約が更新されているかチェック
外資系企業の経理で特有のここだけは注意しておきたい2点
わたし自身、税務調査を何度か経験しましたが、税務調査で外資系企業が突かれるポイントのメインはまずIntercompany transactionと言っても過言ではありません。
当たり前ですが、国税局が抑えたいのは取れる税金が海外に流れてしまうことです。
外資系企業のほとんどは本国の親会社に多くのお金が移動していきます。
国税局はなんとか穴を突いて海外流出を防げれば大手柄になりますよね。
もちろん、国内の取引で税務的にマズイことをおこなっている企業はそもそも論外ですが。
ということで、上記の注意しておきたい部分を説明していきます。
本国一括管理の費用は必ず計算資料をもらう
多くの外資系企業ではグローバル共通の費用や子会社の管理費用などを親会社で管理していることが多いでしょう。
たとえば、一つ例を挙げるとIT management fee(アイティー マネジメント フィー:IT管理費)というものがあります。
IT management feeとは、親会社がすべての子会社のシステム費用(SAPなどのERPシステム利用料、サーバー代、システム管理に関わる人件費等)を負担および一括管理して、それぞれの国の子会社へかかった費用を請求するものを言います。
また上記以外には、Stewardship / Management fee(スチュワードシップ もしくは マネジメント フィー:管理費)というものもあります。
Stewardship / Management feeとは何かと言うと、要は子会社管理費ですね。
会社により言い回しは異なり、Offshore services fee(オフショア サービス フィー)という会社もあります。
親会社が子会社を管理するために必要な経費(子会社のマネジメント担当の人件費、子会社研修費、法律関連費用等)になり、こちらもそれぞれの子会社にTotal費用を按分して請求します。
上記の費用を請求された場合、Invoice(インボイス:請求書)が必要なのはもちろんですが、どのように親会社でかかった費用を割り当てたかのCalculation sheet(カリキュレーション シート:計算シート)を必ずもらってください。
なぜならば、間違いなく税務調査で計算の根拠資料を求められるためです。
会社によって、毎月上記費用のInvoiceが発行される会社、Quartaly(クオータリー:四半期毎)に発行される会社もあると思いますが、Calculation sheetをもらうタイミングは年1回で年間の費用が固まったらでよいでしょう。
というより、数字が固まっていないともらえないですよねw
とにかく、Caluculation sheetをもらうということを忘れずに注意してください。
間違いなく、税務調査で突かれます。
取引のある国との租税条約が更新されているかチェック
わたしは以前下記のようなことがありました。
ドイツ系企業とお付き合いのある経理の皆様
日独租税条約が変更されましたよ!
・・・昨年の話ですがwお付き合いのある税理士法人から変更のお知らせがなかったのはショック。
日本の税法が変わった時は教えてもらえるんですが。。。
なので皆様ご注意を。https://t.co/AYkVdCkBk3
— 外資人事・採用@かみぞの (@kamifinance) October 16, 2018
日本とドイツの日独租税条約が改正されており、利子、配当、使用料の源泉所得税が10%⇒免税に変更されていました。
多くの外資系企業において、Royalty(ロイヤルティ:使用料)と言って、親会社に売上の数%をブランド使用料などの対価として支払いをする会社は多いでしょう。
また、親会社への配当の支払いもありますよね。
そんな中、10%の源泉所得税が免税になると、とてつもない金額がグループとして削減されます。
定期的にでも不定期的にでも租税条約をチェックして更新がないかを確認しましょう。
わたしは(現在働いている企業では)お付き合いのある某大手税理士法人から、日本の税制の更新情報は教えてもらっていましたが、日独租税条約までは教えてもらっていなかったです。
税理士法人から何でも教えてもらえると考えると抜けもあるので、しっかり自分自身で調べることが大事だとあらためて気づかされた瞬間でした。
最後に
外資系企業では当たり前ですが、国際取引が多いため、国際税制を理解しておくことは重要です。
ただ、その前段として、本国一括管理のIT management feeやStewardship feeなどの費用を請求された際は、必ずCalculation sheetをもらっておく。
また、取引のある国の租税条約を定期的にチェック(たとえば、Googleで「日本 ドイツ 租税条約」と検索するだけで、簡単に情報は得られます)する。
この2点に注意しておくだけでも、「こいつは外資系経理のポイント分かっているな」と思われます。
国際税務はTP ”Transfer price”(トランスファー プライス:移転価格)など奥の深い話はたくさんありますが、上記の基本ポイントはしっかり抑えておきましょう。
なお、経理未経験から外資系企業の経理に転職の際に注意いただきたい記事は下記。