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フリースタイルダンジョンから得た、スキルよりもコンテンツの強さ
フリースタイルダンジョンという番組はご存知だろうか?
深夜帯におこなっている、RAP(ラップ)で対決をする番組である。
ラップ界で有名なラッパー(ラップをする人のことをラッパーといい、この番組では有名なラッパーを”モンスター”と称している)にチャレンジャーが勝負を挑みどんどん勝ち抜いていくという番組だ。
一時はラップ旋風を巻き起こし、都内のラップスクールなどに申し込みが殺到したとかしないとか。
実際に番組を観ていただくと分かるが、ラップというのはすごく奥が深い。
わたしもプロではないが、大きくラップの上手い下手は下記の要素から成り立っている。
◆音楽に合わせてラップができているか
◆ラップの言葉で韻(ライム)が踏めているか
◆相手の言葉に対してちゃんと返答(アンサー)ができているか
◆お客(リスナー)の気分(バイブス)を掴んでいるか
◆ラップの言葉に魂(ソウル)がこもっているか
音楽に合わせてラップができているか
音楽に合わせてラップができていることは、大前提だ。
カラオケなどで歌を歌っている時に、リズムや音程が合っていないといわゆる音痴の判定をされてしまう。
同じようにラップもバックミュージックに沿っておこなうことが基本である。
その中で、音のリズムを取るだけでなく、音に合わせて歌うようにラップをすることをフロウという。
フロウもラップをする上で重要な要素となる。
ラップの言葉で韻(ライム)が踏めているか
ラップに限らず、最近のヒットソングにはこの節があるが、ラップで重要視されるのは、韻がちゃんと踏めているかだ。
念のため、韻を踏むとは言葉の母音を合わせること。
たとえば、下記の最後の”英語”と”へ行こう”と最後の母音を合わせることを韻を踏むという。
◆わたしの特技は英語(”えいご”のe,i,oが母音)
◆だからUKへ行こぉ(”へいこぉ”のe,i,oが母音)
韻を踏んだ言葉というのは耳障りがよい。
そのため作詞のヒットメイカーたちはここを意識して作詞することが多い。
ラップバトルではこの韻を踏んだラップを即興でおこなう。
非常に難度の高い技である。
相手の言葉に対してちゃんと返答(アンサー)ができているか
ラップバトルでは、相手が言った言葉をちゃんと返してこそバトルである。
自分で事前に言う言葉(ネタ)を準備して言うだけでは評価されない。
そのため、ラップをするだけでは勝負にならず、相手のラップをちゃんと聞けるかも一つのスキルだ。
お客(リスナー)の気分(バイブス)を掴んでいるか
フリースタイルダンジョンでは、審査員(ジャッジ)がいてジャッジが勝敗を決めている。
ただし、多くのMCバトル(ラップでの勝負)ではお客さんが勝敗を決めている。
なので、上手く相手にアンサーができていたり、韻を踏んでいると会場のお客さんが沸き、バトルに勝つことができる。
勝負ではラップの技術だけでなく、リスナーの心をつかむのも勝敗の大きな要因だ。
ラップの言葉に魂(ソウル)がこもっているか
最後が一番重要で言葉に魂がこもっているかだ。
どんなに音に合わせて、韻を踏んで、相手にアンサーをしていても魂がこもっていない言葉は薄っぺらい。
現実世界でもそうだが、上っ面だけ整えても言葉は響かない。
魂のこもった言葉はすべてを凌駕する。
MCバトルは難しい
ラッパーはMCバトルをするときに上記の5つのすべての要素を意識して勝負する必要がある。
音に乗りつつ、相手が言っていることを聞きつつ、返答しつつ、韻を踏みつつ、言葉に魂をのせる。
しかも、即興で。
これをおこなうには、とてつもない頭の瞬発力が要求される。
ものすごく難しく、一夜でできるような代物ではない。
なので、テレビで見る悪そうなラップのお兄ちゃんたちは、実はものすごい練習をしている。
いわゆるプロのアスリートと同じようにコツコツとマジメにひたむきに努力をしているのだ。
そう考えると、悪そうなお兄ちゃんたちを見る目が変わるだろうか?
とにかく、ものすごく反射神経と運動神経を使うものであることを知ってほしい。
ジャッジはどのように勝負を判断するか
フリースタイルダンジョンでは5名の審査員がおり、有名なラッパーや”いとうせいこう”などいろいろなジャンルの人がジャッジをしている。
ジャッジによって、勝負の行方は決まるが、全員が全員同じ判定になることはそこまで多くない。
つまり、皆それぞれ評価のポイントが異なるということだ。
音の合わせ方(フロウ)のポイントが高い人、韻が踏めている部分のポイントが高い人などさまざまだ。
ただ、何を差し置いても重要なポイントは、ラップの言葉に魂がこもっていることだ。
その中でもそれぞれ人によってどの言葉が胸に刺さるかは、皆それぞれ価値観が異なるのでバラバラになる。
だからこそ、勝負の判定は難しく時には物議を醸し出す。
フリースタイルダンジョンをビジネスにたとえる
前置きがとてつもなく長くなってしまったが、MCバトルでの評価において重要だった言葉に魂がのっているかというのはビジネスの場でも同様にムチャクチャ重要だ。
特に経営者の言葉なんてのは顕著に分かりやすい。
この人は、本気で会社を変えたいと思っているのか、それとも上っ面な言葉を並べて耳障りのいいことだけを言っているのかは、意識をしていなくても分かってしまうことはないだろうか?
要するに、いくらよいプレゼン資料で、起承転結がしっかりしていて時流にのった言葉を並べても、肝心の魂がのっていない言葉はリスナーには響かない。
反対にまだまだスキルが足りないビジネスパーソンでも、ものすごく熱い想いを持っており、一生懸命に伝えている姿は誰しも心を打たれる。
以前、フィギュアスケートの浅田真央ちゃんがソチオリンピックで失敗なくフリーの演技を終えた時、メダルこそ逃したものの日本中を感動の渦に巻き込んだのは言うまでもない。
つまり、スキルよりもコンテンツ(中身)というのは圧倒的に強いのだ。
さいごに
普段の仕事において、お客さんに、上司に、他部署に上手く想いが届かないことはないだろうか?
そんな時、自分自身がフロウや韻を踏むなどのスキルにばかり頼っていないかを思い返してほしい。
ちゃんと言葉に魂をのせているかを。
あなたの想いが言葉にノった時、相手のバイブスが上がっているのを感じるだろう。
コンテンツはスキルを凌駕する。