かみぞの視点

M-1でのぺこぱの漫才のネタは中間管理職の建前と現代の価値観そのものだ!

M-1でのぺこぱの漫才のネタは中間管理職の建前と現代の価値観そのものだ!

あなたは車の音を表す時にどのように表現するだろうか。

車と言えば「ブーン」という音だと思っている人は自分自身が凝り固まった頭なことを痛感せざるを得ない。

2019年末の漫才の祭典“M-1グランプリ”でわたしも凝り固まった頭なことを痛感した。

そう、今日本中を走っている車の多くはハイブリッド車やEV車で音を表現するなら「スーン」や「ヒューン」である。

この時代の変化を痛烈に表しているのがお笑いコンビの“ぺこぱ”である。

彼らは今までの漫才の概念を覆し、年に1度の漫才の頂点を決めるM-1グランプリで見事最終決戦に残り、3位という結果を残した。

この結果こそ、ぺこぱの漫才を笑える世論が時代の転換期を表しているのに他ならない。

 

M-1でぺこぱが決勝に残ることは古い価値観と新しい価値観の移り変わりを表現している

ぺこぱの漫才は日本の単一民族国家に大きな疑問を投げかけている。

日本と言う国は異質を嫌い、同一であることや共通の価値観を持つことが当たり前とされてきた。

たとえば、髪は黒くなければならない、会社にはスーツにネクタイが常識だ、男が働き女が家事をする。

こう言った古い常識は、今徐々に常識ではなくなっており髪の色は自由、会社に私服で行ってもよく、女性が働いて男性が家事をすることもどんどん広まっている。

つまり、単一化された価値観が広がりを見せているのだ。

そうは言っても、今の日本は昔からある常識と新しい価値観との“狭間(はざま)”に立たされていると感じる人も多いだろう。

だからこそ、SNSやニュースなどで昔からの常識と今の常識論争が繰り広げられて話題になっている。

しかし、今回のぺこぱの漫才はどうだろうか?

見ていないあなたのために簡単に解説するが、彼らの漫才はツッコまず(否定や指摘をせず)賛同するのだ。

 

ぺこぱのツッコまない漫才は現在の価値観を風刺している

漫才は基本的にボケとツッコミがあり、ボケは一般的に非常識だと思われる発言や行動をし、それをツッコむ(否定や指摘をする)ことで笑いという世界を作り出している。

だが、ぺこぱの漫才は昔からある漫才の常識をも変えたのだ。

たとえを上げると、今までの漫才であればタクシー運転手が突然運転中に休憩を取ったら「いきなり俺が乗っているのに休憩かよ!常識がない!」とツッコむだろう。

いわゆるセオリーというやつだ。

しかし、ぺこぱの漫才は違う。

いきなり休憩を取ることを否定せず、相手にもなんらかしらの理由があるという深い思慮から「休憩は・・・取ろう!働き方を変えていこう!」と今の長時間労働や休憩が取れない厳しい職場環境に笑いで新しい価値観を投げかけている。

そしてこの新しい価値観が笑いに繋がっている。

少し前であれば、「いきなり休憩なんて非常識だよ、そんなのおかしいよ」という考えがまかり通って「休憩は取ろう」では笑いにならなかっただろう。

しかし、現在は効率化、生産性というキーワードで休憩もしっかりとり、短い時間でどうやって効率的に働くかといった新たな価値観にシフトしていっていることをわたし自身肌で感じている。

そしてぺこぱが評価されたということは、日本全体が「たしかに今の時代はいろんな価値観があるよね」とさまざまな価値観を受け入れることに許容したと言えるのではないだろうか。

また、さらにわたしが思ったのは、もしかすると、ぺこぱのツッコまないツッコミは現代の中間管理職の建前なのかもしれないということだ。

 

ぺこぱのツッコまないツッコミは現在の中間管理職の建前

なぜ、ぺこぱのツッコまないツッコミは現在の中間管理職の建前かと言うと、現在の中間管理職は新たな価値観を受け入れることを求められているからだ。

中間管理職に多い40代以上の層は旧来の仕事の価値観で会社で育ってきた。

自分たちは長時間労働を求められ、有給休暇も取らず、すべてを会社に捧げてきた。

しかし、時代は変わり部下には残業を減らすことを求め、有給休暇の取得を促し、ワークライフバランスを充実させることを勧めなければならない。

急に自分自身の常識を180度変えることを求められているのだ。

そんな中間管理職の心の声がぺこぱのツッコまないツッコミと交わると

「休憩…(を取るだなんて甘いこと言ってんじゃないよ!…と言いたいがワークライフバランスが大事だって言わないとパワハラで問題になるから)は取ろう!(本当はガンガン働かせたいけど)働き方を変えていこう!」

という建前しか言えない状態を表しているのかもしれない。

テレビの前でM-1を見ていた中間管理職は笑いより共感が強かった人が多いのではないだろうか。

そんなことから、ぺこぱのツッコまないツッコミは現在の中間管理職の建前を表していると感じた。

 

ぺこぱの漫才は将来の超高齢化社会の問題を深く考えさせられる

今までの漫才であれば電車で老人に席を譲ろうとして、席を譲る側も老人であれば「お互いにお年寄りやったら意味ないじゃん!」とツッコむだろう。

しかし、ぺこぱの漫才はお年寄りがお年寄りに席を譲ろうとすると「お年寄りがお年寄りに席を譲る時代がもうそこまで来てる!」とこれから来る超高齢化社会の新たな考え方を笑いに変えているのだ。

ここで笑いで終わらせることもできる。

しかし、本当に電車に乗って優先席で高齢者が高齢者に席を譲る状況をイメージしてほしい。

自身が高齢者になった際、自分よりも見た目が上の人に席を譲るだろうか?

また、席を譲ることは失礼にならないだろうか?

きっとこんなニュースが数年後にはさらに増えているだろう。

ぺこぱの漫才のネタは、ただの笑いで終えるにはもったいないくらい、多くの日本の問題、価値観の移り変わりを表している。

そして、2019年の年末、日本はさまざまな価値観を受け入れる土台ができているんだとぺこぱの漫才が受け入れられていることから強く感じた。

 

さいごに

“ぺこぱ”という漫才コンビがM-1グランプリで3位の結果を残したことで、日本が多様な価値観を受け入れる体制ができてきたことを垣間見た。

また、これから2020年はさらにたくさんの価値観が生まれ、受け入れられ、また疑問視されていくと思われる。

冒頭で車の音は「ブーン」という自分自身で無意識に作られていた常識をぺこぱの漫才を見ることで破壊することができた。

今後、もっともっと考え方を破壊していくことは必要になってくるだろう。

自分自身がいつでも柔軟に変わっていけるように、今までの常識に捕らわれず当たり前と思っていることにも「ちょっと待てよ」と疑問を持つクセをつけることが日常生活でもビジネスでも欠かせなくなる。

あなたは2020年、自分の常識を変えられるだろうか。

それよりも、ぺこぱの漫才観ましたか?