かみぞのです。
2020年はコロナウイルスの影響で世界中のどの企業も多かれ少なかれ経済的にマイナスのインパクトがあるでしょう。
もちろん、特需のあった会社もほんの一部ですがあると思います。
当たり前の話ですが、会社は基本的にお金が尽きれば倒産します。
ただ、さまざまな企業はお金が尽きないように経営状況が悪化した際には対策を取りますが、その中でも特にセンシティブなものがリストラです。
今回は、わたしが外資系企業で経理やFP&A※、そして人事で不況や経営状況の悪化時の対策をした経験から企業が不況時にリストラをおこなうまでの流れを紹介します。
※FP&Aって何?という方は下記参照
外資のFP&A(エフピーアンドエー)とControlling(コントローリング)って何?
Contents
経理と人事の経験から知った不況で経営状況が悪化した企業がリストラ(解雇)をおこなうまでのコストカットの流れ
まず、結論として以下の流れを踏みます。
■企業がリストラをおこなうまでのコストカットの流れ
【第1フェーズ】経費の削減、投資の延期or中止
↓
【第2フェーズ】残業代の圧縮、ボーナス減額、採用凍結
↓
【第3フェーズ】派遣社員の削減
↓
【第4フェーズ】早期退職募集
↓
【第5フェーズ】解雇(リストラ)
会社によって上記の順序が異なるところもあると思いますが、基本的に正社員(無期雇用の社員)をリストラするのは最後の手段と考えるのが一般的です。
それぞれの詳細を次に説明していきます。
経費の削減、投資の延期or中止
企業の売上増加が見込めず売上が下がり、利益が圧迫されると、まず手を付けるのは経費の削減です。
経費の削減としてはさまざまなものがあります。
分かりやすいメジャーな部分で言えばテレビやWeb広告などの広告宣伝費ですね。
さらに出張などの旅費交通費や接待などの交際費などがまずは費用削減としてまず抑えられる部分となります。
それ以外でも外部に委託する研修や通信教育などの教育訓練費なども目を付けられる部分です。
経費の他に投資もストップがかかることが多いでしょう。
工場などであれば、今年予定していた生産設備の購入などは延期や中止になる可能性が高いです。
基本的にはすぐに分かりやすく金額が抑えられて付加価値要素が高い部分や金額のインパクトが大きい投資などが削減効果が高いため削減対象となります。
外資系企業の場合、実際にあったケースとして日本の売上は悪くない状況でもグローバルでパフォーマンスが悪い場合は、グローバルで一律マーケティング費用の10%カットなど有無を言わさず削減されたこともあります。
マーケティング部門の部門長が本国に対して「日本は売上も利益も出てるから削減対象から外してくれ」と頼んでも特別扱いはされず無駄に終わったこともありました。
残業代の圧縮、ボーナス減額、採用凍結
経費を削った次に費用を削る部分は人件費です。
経営状況によっては経費削減と同じタイミングでおこなわれることもあります。
企業のビジネスモデルにも寄りますが多くの企業での金額的インパクトが大きいのは何と言って人件費です。
ただし、ビジネスをおこなっていく上である意味、最もセンシティブな部分もこの人件費と言えます。
まず、人件費の削減でおこなう部分は残業代の圧縮です。
売上が下がるということはものすごくシンプルに考えるとそれだけ業務量が減ることを意味しますので、残業をしてまでおこなうことが減ると考えるためです。
たとえば、工場でイメージすると分かりやすいですが1日100個モノを作っていた会社が1日50個に減った場合、作業時間も同様に半分でよいというのが分かりやすい例ですね。
もちろん、売上が減ることによる各種対応で仕事が増える人もいますが、基本的には残業時間は減ります。
次におこなうのはボーナスの削減です。
ボーナスは働く人の士気にものすごく影響を及ぼすので絶妙なさじ加減が必要ですが、リストラで人を切る前にできることとしては王道の流れですね。
さらには採用凍結です。
念のためですが、採用凍結とは採用活動を一時停止する意味になります。
そもそも業務が減ってマンパワーが必要ないため残業削減をおこなっている中で新たな採用をおこなう活動は矛盾になりますよね。
企業により異なりますが、転職エージェントを利用して採用をおこなう企業は採用費も大きく削減できますので採用凍結をおこないます。
ちなみに外資系企業の一例としては本国から各国の子会社へ指示が飛びその日の内に採用活動がまったくできない状況となります。
ただ、どうしても採用が必要な場合は日本で採用をおこなう場合、まずアジア統括での承認を取り、さらに本国の承認を取って採用ができるということもありますが、採用がOKになる確率はほとんどないですね。
なお、採用凍結をhiring freeze(ハイヤリング フリーズ)と言います。
派遣社員の削減
経費を削減し、人件費の残業代やボーナスをおこなう次におこなうのは、派遣社員の削減(リストラ)です。
派遣社員の多くは契約期間があるため現状の契約期間からの更新をストップするいわゆる雇い止めをおこなっていくのが一般的な流れになります。
外資系企業の中には上記の流れと異なり、一部の評価の低い正社員が派遣社員よりも前にリストラとなり派遣社員を継続するケースもありました。
しかし、順当な流れとしては派遣社員からリストラしていきます。
早期退職募集
上記をおこなってもまだ黒字化や回復が見込めない場合は、早期退職募集をおこないます。
あくまでも退職者を募集する形となるので、会社側が当人を指名して解雇をしていない部分がミソです。
よるある例は、退職金の上乗せをおこなったり、年齢制限を設けたりする会社は多いですね。
会社にとっては、会社を去ってほしくない人に出ていかれてしまうリスクを伴うので、事前にそういった人に釘を打って対策をする会社もあるようです。
外資系企業の場合、この早期退職募集をすっ飛ばして退職金を上乗せして指名解雇する会社もあります。
基本的に解雇をされるとショックを受ける人が多いですが、実は外資系企業においてリストラを非常に喜ぶ人もいるんです。
理由の1つとしては、高額な退職金をもらえる点があります。
また外資系企業で働く多くの人は転職経験があり、クビになってもすぐに次が見つかるだろうと考えている人も多いためです。
もちろん、その考えに至るには日々転職市場をチェックしたり自分自身の市場価値を理解したりしているからにほかなりません。
なのでリストラで喜ぶ人は、退職が決まったらすぐに次の会社を決め、次の転職先に行くまでの間の自由な時間で趣味や旅行などに一定期間充て英気を養ってから再度別会社に異動していきます。
たぶん、今まで一度も転職をせず、転職活動もおこなっていない状態でリストラ宣告をされたら上記は考えられない話でしょう。
※外資系のクビの考え方や転職は下記を参考に
外資系企業への転職のまとめ(転職準備から未経験・経験者の転職方法、面接対策)
解雇(リストラ)
早期退職を募集してもダメだった最終手段が解雇です。
一般的にはパフォーマンスの低い人をリストラする傾向がありますが、会社によっては組合などの関係もあり、年齢が若い人、もしくは年齢が上の人や社歴が短い人、共働きなどの家庭を考慮してリストラをするケースもあるようです。
労働契約法では解雇にあたって以下のように記載されています。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:厚生労働省の労働契約法のページへ
法律の細かい話は割愛しますが、平たく言えば最終手段として解雇はありだが、経費削減やボーナスカットなどあらゆる手を尽くした上でじゃないと解雇は無効だよということです。
いずれにせよ会社の雰囲気は重いのは言うまでもありません。
さいごに
今回は、不況で企業がリストラをおこなうまでにおこなう以下の流れを紹介しました。
■企業がリストラをおこなうまでのコストカットの流れ
【第1フェーズ】経費の削減、投資の延期or中止
↓
【第2フェーズ】残業代の圧縮、ボーナス減額、採用凍結
↓
【第3フェーズ】派遣社員の削減
↓
【第4フェーズ】早期退職募集
↓
【第5フェーズ】解雇(リストラ)
あなたが働いている会社で上記のどのフェーズ(段階)に入ったかで会社の経営状況を判断する指針となります。
たとえば経費削減が始まったら「第1フェーズがスタートしたな」といった感じで理解し早期退職募集があると「次はリストラだな」と判断いただければと。
いずれにせよ、リストラ宣告をされてから転職活動を始めても焦って転職した先がブラック企業という状況にならないために早め早めに準備をすることをオススメします。
転職でブラック企業を避けるシンプルな方法【外資系企業の経理編】