かみぞの視点

期限を破る、言われたことをやらない、そんなありがたい人を咎めてはいけない

期限を破る、言われたことをやらない、そんなありがたい人を咎めてはいけない

社会人として働きはじめて10年以上が経った。

10年も働くと本当に世の中にはいろんな人がいることを痛感する。

営業をやっていた時代に、新しい商品の商品説明を聞いて説明が終わってから5分もしないうちにテレアポをスタートし、商談のセッティングを瞬く間に量産した化け物のような人に会った際は、この人には同じ土俵では一生勝てないと思った。

一方で、決められた期限を平気で破り、なんの悪びれもない人もいた。

また、これをお願いと言われても言われたことをやらない人など、基本的なことが守れない人も多くいる。

いわゆる仕事のできない人と言っていい。

わたしは、そんな仕事のできない人は正直会社としてお荷物だし、さっさと辞めてもらうのが会社にとってもっとも効率がよいという考えがあった。

少し前に学生時代に一緒に仕事をしていた友人と久しぶりに会う機会があり、居酒屋で思い出話に花が咲いた。

その友人は学生時代に起業をしており、大学4年のタイミングで自身の会社を閉めてある日系大手メーカーに就職をして現在は世界をまたにかけて働いている。

わたしも彼の仕事を学生時代に手伝い、彼の仕事ぶりに年下ながら尊敬の念を抱いていた。

お互いビジネスで知り合っただけあって、居酒屋での話題は仕事の話に。

何かのタイミングでわたしは「仕事ができない人をさっさと辞めさせたら、世の中の会社はもっとうまく回るのに」と友人に話した。

友人はわたしの話を聞いて「たしかに、そういう考え方はあるし、会社としても生産性は高まるよね」と言った。

また続けて「ただ、仕事ができない彼らは使えない人ではなく、“ありがたい人”だと俺は思うけどなぁ」と。

わたしは驚きを隠せなかった。

会社に貢献もせず、仕事もろくにできない人がなぜ“ありがたい人”なのか。

わたしは「なんで仕事もできない人が“ありがたい人”なの?」と間髪入れずに聞いた。

 

期限を破る、言われたことをやらない、そんなありがたい人を咎めてはいけない

友人はニヤッとしてわたしにこう言った「上司なり、周りの人は誰かを昇進させる時や、優秀だと伝える時って、他の人と比較して優れているから昇進させたり、優秀だと判断したりするだろ、つまり自分が評価されているってことは、周りが評価されていないお陰なんだよ。

友人曰く、仕事ができない人がいるおかげで相対的に自分の評価が高く映っている。

だから、わたしは仕事のできない人をダメな人を咎めるよりも、仕事ができない人に感謝したほうがいいという話である。

なぜなら、仕事が得意でない人のお陰で自分が評価されている訳だから。

逆をイメージすると簡単に理解できる。

周りが超絶優秀でバツグンの結果を残している人ばかりだった場合、わたしがそこそこな結果をだしていても、上司はわたしをチームの中で仕事ができない人と判断をする。

なぜなら、評価はあくまでも相対評価だから周りが超優秀な人ばかりであれば、否が応でもチームの中ではわたしは仕事ができない側となる。

良くも悪くもこれが競争社会の現実だ。

さらに言うと、不況時こそ仕事ができない人は“ありがたい人”となるのだ。

 

不況時こそ仕事のできない人は“ありがたい人”となる

不況時に企業が倒産という最悪のシナリオを避けるためにやることはリストラだ。

※下記、参考までにリストラをおこなうまでの企業のコストカットの流れ

【リストラまでの流れ】経理と人事の経験から知った不況で経営状況が悪化した企業が解雇をおこなうまでのコストカットの流れ

リストラをおこなうまでのコストカットの流れ
【リストラまでの流れ】経理と人事の経験から知った不況で経営状況が悪化した企業が解雇をおこなうまでのコストカットの流れかみぞのです。 2020年はコロナウイルスの影響で世界中のどの企業も多かれ少なかれ経済的にマイナスのインパクトがあるでしょう。 ...

 

こんな時に仕事ができない彼らの存在はありがたいと友人は言う。

「リストラは基本的には仕事ができないパフォーマンスの悪い人がされるだろ、彼らは俺に代わって退職させられるんだよ」

友人は、仕事ができない人たちは自分の評価を上げてくれて、不況の際は自分よりも早いタイミングで自分より先に退職させられて本当にありがたいと。

さらに「彼らはいつも自分に迷惑をかけてくるかもしれないが、評価やリストラといったここぞといった場面では必ず自分を守ってくれる、だから感謝しかない

わたしは友人の思考回路に脱帽した。

彼の考え方は、たとえばパチンコにハマりお金を減らしている人たちに対して、勝率を考えられない残念な人たちだと思うのではなく、彼らのような人がいるおかげで回っている産業があるからありがたいという発想だ。

彼らは自ら喜んで搾取される道を選んでいる。

そのおかげで経済が回っているので、ありがたいということだ。

わたしはまだスッキリしない気持ちもあるが、たしかに仕事が苦手な人にいつまでもイライラしていても何も変わらない。

これをいかにポジティブに変換することで精神的に落ち着くかを考えると彼の発想は一理ある。

だてに友人は学生時代に起業しようと考えるだけはある。

 

さいごに

仕事ができず、あなたに迷惑をかける人に対してイライラして咎めたりしていないだろうか。

そんな彼らは、ここぞといったところであなたの雇用とあなたの評価を守ってくれている“ありがたい人”なのだ。

だからこそ、彼らに感謝して働くことで精神的にゆとりをもつことができるとは思わないだろうか?

ちなみに友人がもし上司の立場だったら、仕事ができない人をどうするか聞いてみると「クビにできるならすぐにするよ、だって上司の役割はチームを強くしてチームのパフォーマンスを上げることだろ?」とのこと。

あいかわらず友人の思考回路には脱帽だ。